メーカーの利益は過大ではない

いくつか記事を読んだんですが、権利者側の言い分に全く共感できないのはなぜなんでしょうか。

お金の話になってるからなのかなあ。
「あるメーカー」とか経済産業省とかを持ち出して、悪者探しをしてるからなのかなあ。

消費者の視点が感じられないからなのかなあ。



「コンテンツとハードは互恵関係にあるはずなのに、メーカーはこれだけの利益を手にしながら、権利者を一切踏みにじってきた。自分さえよければ、コンテンツはどうなってもいいのか」(椎名さん)

「ダビング10を人質になどしていない」「メーカーは“ちゃぶ台返し”だ」 権利者団体が会見 (2/2) - ITmedia News から引用
「分け前をよこせ」といってるだけに見えてしまうんですよね。正当な権利の主張をしているつもりなんでしょうし、事実そういう側面はあるはずなんですが……。私がメーカーに近い業界にいて、また一消費者として見ているからなんでしょうか。


権利者側が提示したデータによると、デジタル関連機器の市場規模(映像、音楽、テキスト、家庭用ゲーム関連商品を合算)は、2005年は4兆3638億円、2006年(予測値)は6兆3888億円。

「ダビング10を人質になどしていない」「メーカーは“ちゃぶ台返し”だ」 権利者団体が会見 (2/2) - ITmedia News から引用
デジタル機器関連の市場規模っていっても、算出根拠がちょっと調べられなかったんですが、国内市場で、消費者が購入する金額ベースだと仮定します(国民一人あたり5〜6万円/年奈良そんな物かな、と思えますので)。
2007年の数値が2006年より大きくなってることを考え、仮に7兆円だとして、小売店仕入れ原価を考えると、メーカーの売り上げ金額としては8割ぐらいになるのかなあと。メーカーの粗利率が仮に3割だとしても、デジタル機器関連でメーカーが得ている粗利って2兆円にはならないのでは。利益で計算すると、仮に利益率10%だとしても6000億円程度にしかならないと思われます。

一方、



コンテンツの種類別の内訳は、映像が7,112億円(前年比2.4%増)、音楽が7,828億円(0.5%減)、ゲームが6,134億円(23.9%増)、図書、画像・テキストが6,626億円(13.8%増)。ゲームコンテンツはニンテンドーDSの好調や次世代ゲーム機の発売などで市場規模を拡大する一方、音楽コンテンツはパッケージソフトの売上減が響き前年比で減少となった。


流通メディア別の分類では、パッケージ流通が1兆8,690億円(前年比3.7%増)、インターネット流通が4,617億円(28.8%増)、携帯電話流通が4,392億円(10.7%増)となり、インターネットや携帯電話によるコンテンツ流通の拡大が目立つ。

ネット流通のコンテンツが市場を拡大、デジタルコンテンツ白書2007 から引用
それに比べると、コンテンツの粗利はもう少し大きいでしょう。特にインターネット流通、携帯電話流通では流通コストが抑えられる分かなり高い利益率が見込めるのかな、って考えると……メーカーの方が多少多いかもしれませんが、少なくとも過大な利益を得ているとは思えないんですよね。

互恵関係というよりは依存に近いんじゃないでしょうか。
メーカーはデジタル映像/音楽機器がなくとも(苦しいけど)やっていけます。
消費者は、映像、音楽がなくとも(ちょっとさびしいけど)やっていけます。
でも、音楽・映像の権利者は(直接の演奏・上映以外では)、メーカーが作った製品が消費者に行き渡って始めて利益を得ることができるんですよね。

いっそメーカーが依存を断ち切ってみるのも手かもしれませんね。

ダビング10を人質になどしていない」「メーカーは“ちゃぶ台返し”だ」 権利者団体が会見
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0805/29/news114.html

「消費者のみが負担」を消費者は本当に望んでいるのか,補償金制度とコピーワンス問題で権利者会議が会見
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080529/305212/

ダビング10を人質にしてはいない」。権利者団体会見
−「“あるメーカー”と経産省が、ちゃぶ台返し
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080529/cf.htm