スーパー早期審査第一号

久々の更新となりました。
スーパー早期審査が実施されましたが、29条の2との関係が気になるところですね。





 特許庁は17日、特許の審査期間を大幅に短縮する「スーパー早期審査制度」の第一号として、慶応大が今月1日付で出願した水中の有害金属検出技術を特許に認定したと発表した。

世界最速、17日間で特許認める=早期審査の新制度で第一号−特許庁(時事通信) - Yahoo!ニュース から引用

こんな記事が出てましたね。
これは、




 特許庁は、ユーザの求めるタイミングで早期に権利化が行える審査体制の構築に向け、現行の早期審査よりも更に早期に審査を行うスーパー早期審査制度を創設し、本年10月1日から試行を開始します。

スーパー早期審査の試行開始について から引用
と出ていたものの第一号な訳ですが……

おそらく先願調査自体は手をつけてしまえばそれほど時間がかかるわけではないと思うので、先願が見つからなければ17日で特許査定も出せるとは思うのですが、気になるのは29条の2の扱いです。
特許庁に出願された分について、わずか17日の間にすべて検索可能となっているというのはすごいなあと思うのですよ。出願人がつけた特許分類だけでは不十分なので、特許庁内部できちんと分類を付与して検索できる状態にすると思うのですが、それがきちんと終わっている、ということですよね。
あと気になるのは、海外からの出願が先願になる場合の扱いです。
特許庁自身も




?優先権の主張を伴う先願等の取扱いについて
出願前1年以内に外国特許庁、政府間機関又は受理官庁に出願されている基礎出願については、後に優先権の主張を伴って日本国特許庁に出願された場合、特許法第29条の2の先願となる可能性があります。
しかし、出願公開前の審査の時点では、外国特許庁等に基礎出願がされているのみであり、日本国特許庁への出願がされていなければ、第29条の2の先願とはなり得ません。このため、他に拒絶の理由を発見しない場合は、特許査定されることとなります。

スーパー早期審査の試行開始について から引用
と書いてますが、あくまでも「この時点では特許査定せざるを得ない」というだけであって、後に日本特許庁に出願された場合には無効になる場合があり得る、ということになります。
通常の早期審査でもそういう事は起こりえたのだと思うのですが、これほど速いと……気になりますね。

逆に出願人の立場からすると、審査段階で先願を意識した十分な補正ができず、特許登録後に訂正などの限られた手段で対抗せざるを得なくなることが考えられます。早期の権利化も重要ですし、悩ましいところかもしれません。十分に検討した明細書で臨む必要がありますね。あらかじめ分割出願をしておくとかするんでしょうか。