特許(実案)のみを担当できる「特許弁理士」というのは実現できないものか

知的財産立国ということで様々な施策が打たれたこともあり、弁理士は急増しています。
コラム:馬場 錬成氏「知財戦略で勝つ」第120回「急増する弁理士を活用する社会を作ろう」によると、09年6月30日現在で8194名とのことで、10年程前と比較すると2倍程度の人数になっています。

今後も試験に合格して弁理士登録する人数はそれなりの人数が出てくるでしょうし、数年後には任期付き審査官が7年以上の審査官経験によって弁理士資格を得て大量に野に下ってきます。

にもかかわらず、特許出願件数は頭打ちです。今年は景気の影響もあり、件数がかなり減っているようです。ピークを過ぎたかもしれません。このままでいくと、弁理士一人あたりの特許件数というのは激減する事になります。日本弁理士政治連盟は、今年の7月に提出した陳情書で、



試験制度のレベルダウン、需要を遥かに超えた増員、料金競争、能力・資質の全くない専門外の士業への業務開放の議論等々、国家資格制度の存在意義と矛盾する現象を生じ、制度崩壊の危機に瀕しております。
日本弁理士政治連盟 河村内閣官房長官に「陳情の儀」を提出! から引用
と窮状を訴えています。
※余談ですが、この陳情文は少々問題があるような気がしますね。既得権益にしがみついて感情的になっているように読めてしまいますし、具体的に何を陳情したいのか文面のあちこちにちりばめてあって明確じゃないです……

その一方で、弁理士がまだ足りていないという考え方もあります。地方在住の弁理士が少ないということ、中小企業に十分に手が届いていないこと、特許事務所内で「特許技術者」が本来弁理士にしか出来ないはずの業務を行っている場合があるという噂があることなど、実際に足りていないとも思える状況もあるようです。また、以前よりは合格しやすくなったとはいえ、やはり弁理士試験の難易度は高く、かなりの勉強時間が必要で、また地方在住者が取得するには困難が伴います。大都市居住者が資格を取得し、そのまま大都市で職を見つける事が多いでしょうから、地方には弁理士は来ません(もちろん十分な仕事量がないこともありますが)

で、思うんですけど、今必要とされている人材って、本当に「弁理士」なんでしょうか。弁理士って、特許だけじゃなく意匠とか商標に関わる手続きを独占的に行うことが出来る資格ですけど、特許(および実案)に専門的な知識を有していれば(逆に言えば意匠、商標を知らなくとも)出来ること、というのも結構ある気がするんです。

弁理士の下位資格として、特許限定の弁理士資格を創設するっていうのはどうでしょうか。意匠も絡めた権利化とか、訴訟対応などは上位資格の弁理士にお願いすることにして、特許の専門知識さえあれば出来ることについては特許限定の弁理士でも行えるようにすればよいように思います。

企業の知財部員、特許事務所の特許技術者、知財コンサルタントなどが特許限定の弁理士資格を持って職務にあたれると良いですね。

分野が狭いとはいえ、十分な専門知識を有していることを保証された資格者であれば十分な能力発揮が期待できますし、従来からの万能型の弁理士に比べると資格取得のハードルが多少下がり、増員が期待できます。特許業務に携わっていれば、地方在住での権利取得も以前よりはやりやすくなるでしょう。これにより、特許事務所内で有資格者が増えて名義貸しに近いようなことは起こりづらくなるでしょうし、特許限定の弁理士から従来からの万能型の弁理士資格にステップアップするルートを設けておけば、受験者にとってもメリットがあると思います。また、従来からの弁理士にとっても面子が保たれる、という側面もあると思われます。

ちなみに、資格の名称ですが、「限定」という表現があると



もらった名刺に「(特許限定)」とか入ってたらちょっと嫌だろうなぁ。
「弁理」屋むだばなし: 限定免許ばなし から引用
などという感じを持たれることもありそうですから、「特許弁理士」とでもした方がいいように思います。大昔の資格名に戻ったような感じですが。

以上、お盆休み中に、

河村内閣官房長官に「陳情の儀」を提出!
http://www.benseiren.gr.jp/M1/furuya/f198_1.html

BizPlus:コラム:馬場 錬成氏「知財戦略で勝つ」第120回「急増する弁理士を活用する社会を作ろう」
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/baba.cfm?i=20090804c8000c8&p=1

これから求められる弁理士像とは
http://www.ipnext.jp/journal/benrishi/shoubayashi.html

等読んでふと思ったことでした。検索してうまく見つけられなかったんですけど、もしかするとどこかで既に真剣に議論されてるかもしれませんけどね。