日経ビジネスAssocie 02/05号

今号の特集は、私にはあんまり参考にならなかったかな……
出願対応の時に発明の要旨をまとめたり、中間対応の時に引例との差をまとめたりするのを考えてみましたけど、A4一枚とかいうことにあまりメリットを見いだせないかもしれませんでした。

P79 経済・政治…3分でわかる大人ニュース

 データの読み方のお話。治安に関する部分では、人口動態統計から加害に基づく傷害および死亡人員の推移をみるとここ20年ほぼ一貫して減少しており、「犯罪不安社会」から転載した図を用いて「全国的には治安が悪化していると感じ、自分の近所で治安が悪化していると感じている人は少ない」という事象を説明しています。これはおもしろいですね。実感と一致します。ワイドショー的な番組が多くなりすぎて悲惨な事件が報道されすぎているように思えますからね。ちょっと「犯罪不安社会」を読んでみたくなりました。

 ただ、特許に関する部分は、それこそ「鵜呑みにしてはいけない」のではないかと思います。
 記事中では、「日本人は創造性が乏しい」という指摘に対抗するために、米国特許件数のうち日本の特許の割合(日本の出願人なのか、発明者が日本人なのか、第一国出願が日本なのか不明)が一貫して第2位であることをもとに「日本人に創造性がないとは言えない」と主張しています。
 しかし、記事の分量も少ないこともあり、少なくとも実務に多少携わっている身からすると全く説得力がありません。図示されたデータが「米国特許取得の国際比較」であるのに、本文中では「米国で出願された特許件数」となっているなど、著者の特許に関する知識が不足しているかもしれません。特許=創造性だと思ってしまっていた可能性もあります。
 まず、件数が多いという事実は、創造性があるという主張をサポートしません。特許の要件には独創性は含まれません(独創的なものは往々にして新規性も非自明性も持っているでしょうが)。一見件数が多くとも、中身を見るとちょっとした改良を加えた改良発明ばかりということもよくあります。中身をみないと何ともいえません。
 特許についてこのような「独創性が云々」という文脈で語られる場合、米国は基本発明が多く、日本は改良発明が多いという言い方になる場合が多いです。
 基本発明の時点ではかなり広い範囲の従属項を一件の出願で書くことができますが、改良発明の場合は基本的な部分が公知になってますから、出願の単一性を満たせず出願件数は増えてしまいがちです。また、後発の方が対抗上件数を増やす場合も多いですね。

P.67 温井ちまきの 今、アメリカで
 冷凍野菜のパッケージにキャラクターを掲載したという記事。
砂糖、塩分、トランス脂肪酸が含まれた食品の宣伝、人気キャラをパッケージに採用したことで子供の健康に危害を与えたとして子供むけテレビチャンネルのニコロデオンの親会社が提訴され、ジャンクフードへのライセンス供与をやめたらしいです。訴訟になるあたりはいかにもアメリカだなあとは思います。
 この記事を読んで思い出したのが、キャラクターの有無(というか子供に対するブランド価値)で親の消費行動が結構変わってしまうということを実感した出来事です。
 次男の通う幼稚園には毎年わざわざ県外の生産者がみかんを持ってきます。子供には、そこの○○ミカンというブランドが強力に刷り込まれます。その子供を連れてスーパーに行くと、めざとくそのミカンを見つけます。ミカンなんてあれば食べてしまうし、菓子ほど悪いイメージもないし、つい買ってしまうこともあります。何か果物を買おうかな、と思っているときなら確実にミカンになるでしょうし、どうせミカンを買うならそのブランドのものを選ぶでしょう。スーパーに行く度、刷り込みの強力さに感心させられます。
 まあ、だからといって、決定権は親の手中にあるのですから、そんなことで子供の食生活が大幅に変わってしまってはいけないですけどね。同種の食品の中でどれを選択するか、あるいは付加的な一品が時折追加されるかどうかにしか影響力は及ばない(それ以上に及んでいるとすればそれは親の責任であるべき)と思うので、日本的な感覚では少なくともキャラクターのライセンサーには責任があるとは到底思えませんが……。