ミネルバ社が取得した携帯電話の基本特許?(US7,321,783B2)について

携帯業界に衝撃、米国企業が多機能携帯の基本特許を取得
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200801261048

カリフォルニア州ミネルバ・インダストリーズ(Minerva Industries)社が22日付けで米特許庁から許可を受けた特許(US 7,321,783 B2)が米携帯電話業界に衝撃を与えている。

 今回、ミネルバ社が取得した特許はパームサイズの携帯電話に、インターネット接続やメモリー用のスロットを装備したいわゆる多機能携帯電話の基本概念をまとめた基本特許に近いもの。業界ではこの特許があればほとんど全ての携帯電話メーカーに対しても特許侵害の訴訟を起こすことが可能といった見方が強まっている。

話題になっているようなので、米国特許庁のサイトに行って一応見てみました。
http://patft.uspto.gov/netacgi/nph-Parser?Sect1=PTO1&Sect2=HITOFF&d=PALL&p=1&u=%2Fnetahtml%2FPTO%2Fsrchnum.htm&r=1&f=G&l=50&s1=7321783.PN.&OS=PN/7321783&RS=PN/7321783
一応、と書いたのは、あまりのクレーム数に、真面目に読むのを断念したから。クレーム数125です。独立項だけで48ぐらいあります(数え間違えてるかも)。

こういう特許の常として、継続出願が使われているわけですが、1997年に最初の出願がされて、その一部継続出願が2000年に、その継続出願が2003年になされて今回の特許として成立しています。

最初の出願(出願番号08/846,108)が、US6,278,884として登録されています。その特許がこちら。まだミネルバ社の名前はないですね。
Portable information communication device
http://www.google.com/patents?id=EGMIAAAAEBAJ


The present invention provides a multi-function portable cellular phone modified to incorporate features that enhance the utility of the phone, and in particular provides a portable and lightweight security system.
とのことで、セキュリティシステムが主になっています。メモリカードの図面もないようです。

2000年の一部継続出願(出願番号09/531,356、US6,681,120)がこちら。
Mobile entertainment and communication device
http://www.google.com/patents?id=HIESAAAAEBAJ
発明の名称が変わって、メモリカードの図面も追加されています。実質的にはこの時点での新規性、進歩性が問われているのではないかと想像していますが、中身をちゃんと読んでないのではっきりしたことは言えません。


 今回の特許についてみると、ものすごい数の引用がされていますし、非特許文献もcited by othersでかなり引用されていますから、いろいろ情報提供があった上で、それなりに審査はされたんでしょうが……。アメリカは結構信じがたい特許が時々通ってしまうので困る場合がありますね。

 日本の携帯電話がこういう分野では先鋭化した面がありますから、日本の特許文献や製品カタログ(特に継続出願の出願直前ぐらいの時期)などの引用が少ないのが多少気になります。このあたりまで引用されていないのであれば、もしかしたら無効化できる余地が残っているのかもしれません。PAIRで見る限りでは、今回の特許に関して最後にOffice Actionが出されて補正がされたのは一昨年ですから、KSR判決の前ですしね。

 これから訴訟になっていくんでしょうから、この発明のポイントがどこと認識されて特許が成立したのか、最初の出願で明細書に記載されていた内容と継続出願で新規に追加された内容がどの程度なのか、新規に追加した内容がその時点で公知だったということを示すことができるかどうか、ということになっていくんでしょうか。