仮専用実施権と仮通常実施権

特許法等の一部を改正する法律案について−閣議決定のお知らせ−
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/tokkyohoutou_kaiei_200201.htm
に掲載された法案によると、
仮専用実施権と仮通常実施権というものが新たに設けられることになるようです。

 従来からある専用実施権、通常実施権は、あくまでも特許成立後に登録されるものでした。そのため、登録前の特許出願に関しては「登録」する仕組みはありませんでした。実際には特許出願に関するライセンス契約も特にクロスライセンスなどの形で行われる場合があるのですが、ライセンサーの倒産などが生じた場合にライセンシーが保護されないという問題が生じていました。

 今回の法案で新設が予定されている仮専用実施権、仮通常実施権についてはその問題を解消するために設置されるものになります。

法案を眺めていて、ちょっと気になったのがこの条文。

(特許出願の放棄又は取下げ)
第三十八条の二
特許出願人は、その特許出願について仮専用実施権又は登録した仮通常実施権を有する者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許出願を放棄し、又は取り下げることができる。

これは、仮専用実施権や仮通常実施権を有する者の権利を保護するためには重要ですし、登録後の実施権について定めた第九十七条とも整合性がとれていますので、必要な条文であることは理解できます。

実際に放棄書や取り下げ書を特許庁に提出する行為については、登録後の特許と同様なので、問題ないと思われます。しかし、一旦登録された特許とはちがい、特許出願には「取り下げられたものとみなす」という規定が多くあります。

たとえば、優先権主張をすると、先の出願は取り下げられたものとみなされます。これについては、四十一条の改正案で三十八条の二と同様の文言が追加されるようです。

審査請求をしなかった場合には取り下げられたものとみなされてしまいます。特に、出願人が誤って審査請求をしなかった場合に、仮専用実施権、仮通常実施権を有するものを保護する仕組みがないのがちょっと気になりますね。まあ、普通に考えれば、仮専用実施権、仮通常実施権を設定した時点で審査請求する場合が多そうですが。

今後どのような審議がされていくんでしょうか。